障がい者雇用とは?障害の種類や障がい者雇用促進法について解説
障がい者雇用とは、民間企業、国や地方公共団体などが、健常者を雇用する一般雇用とは別に障がい者を雇用する枠として確保し、障がいのある人を雇用することです。
障がい者の雇用率は、民間企業と国や地方公共団体などによって異なります。
今回の記事では、障がい者雇用と一般雇用との違い、障がい者雇用に関する法律について紹介していきます。
この記事の目次
障がい者雇用とは
障がい者雇用とは、民間企業、国や地方公共団体などが、健常者を雇用する一般雇用とは別に障がい者を雇用する枠として確保し、障がいのある人を雇用することです。
障がい者雇用の対象となるのは、障がい者手帳を持っている以下の人が対象となります。
・身体障がい
・知的障がい
・精神障がい
参照:厚生労働省:障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192051.html
障がい者の雇用によって、期待されるのは、以下の3つです。
・共生社会の実現
・労働力の確保
・生産性の向上
障がい者雇用を実現することで、障がいに関係なく、個人の意欲や能力に応じ、誰もが職業を通して社会参加できる「共生社会」につながります。
また、障がい者のできることに目を向けて活躍の場を提供することで、労働力の確保になります。
さらに、障がい者が能力を発揮できるように職場環境を改善することは、他の従業員にとっても働きやすい職場環境になるので、相乗効果が期待できます。
障がい者雇用枠
障がい者雇用枠は、障がいの有無に関わらず、就職で不利にならないように、障がいを持った方でも働く機会を得るために用意されている枠です。
一般雇用との違い
障がい者雇用と一般雇用の大きな違いは、障がいへの配慮の有無です。
障がい者雇用の枠で採用された場合は、障がいの種類に合わせた配慮がなされます。
例えば、以下のようなものがあります。
・身体障がいに配慮し、通勤ラッシュを避けた時間帯での出勤
・知的障がいに配慮し、わかりやすいように視覚化されたマニュアルの作成
・精神疾患に配慮し、短時間労働や休憩などを設ける
また、障がい者雇用で就職する場合は、行政からの支援制度も受けられます。
ただし、障がい者雇用の枠は一般雇用の枠よりも数が少ないのが現状です。
障がい者雇用促進法について
障がい者雇用に関する法律として、障がい者雇用促進法があります。
障がい者雇用促進法の目的は、障がい者の職業の安定を図ることです。
障がい者雇用促進法では、障がい者の自立を実現するための職業リハビリテーション推進、雇用主の差別の禁止や合理的配慮の提供義務などを定めています。
法定雇用率
障がい者雇用促進法では、法定雇用率が決められています。
法定雇用率は、民間企業で、2.2%と定められています。
法定雇用率を達成している企業の割合は、45.9 %となっています。
参照:厚生労働省:平成30年 障害者雇用状況の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04359.html
法定雇用率を下回った場合
法定雇用率を下回った場合、納付金を収める必要があります。
納付金は、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主が対象です。
障がい者雇用率が未達成の場合、法定雇用障がい者数に不足する障がい者数に応じて1人につき月額5万円の障がい者雇用納付金を納付しなければなりません。
徴収された納付金は、以下の支給に使用されます。
・障がい者雇用調整金
・報奨金
・在宅就業障がい者特例調整金
・在宅就業障がい者特例報奨金及び各種助成金
障がい者を雇用することは、事業者が共同して果たしていくべきであるという考えから、障がい者雇用納付金の制度があります。
高年齢者・障がい者雇用状況報告書について
高年齢者・障がい者雇用状況報告書とは、毎年6月1日現在の高年齢者及び障がい者の雇用状況を管轄のハローワークを経由して厚生労働大臣に報告することが法律で義務付けられており、その報告時に使用される書類です。
対象となる事業者は、以下のようになります。
高年齢者雇用状況報告:従業員31人以上規模の事業者
障がい者雇用状況報告:従業員45.5人以上規模の事業者
もし障がい者雇用状況報告書を提出しなかったり、虚偽の報告をした場合は、罰則(30万円以下の罰金)となるため、必ず提出しましょう。
障がいの種類
障がい者雇用を進めていくに当たって、さまざまな種類の障がいについて知っておくべき必要があります。
現在障がい者雇用の対象となっているのは、身体障がい、知的障がい、精神障がいの3つですが、それぞれどのような障がいなのでしょうか。
それぞれ詳しく紹介していきます。
身体障がい
身体障がいとは、身体機能に障がいが生じている障がいです。
身体障がいは、身体障がい者福祉法で大きく以下の5つに分類されています。
・視覚障がい
・聴覚・平衡機能障がい
・音声・言語・そしゃく機能障がい
・肢体不自由
・内臓機能などの疾患による内部障がい
また、障がいにはそれぞれ等級が設定されています。
知的障がい
知的障がいは、知的機能の発育に遅れがみられる障がいのことです。
知的機能としては、記憶や判断、知覚などが挙げられます。
知的障がいの判断は、行政施策上では知能指数で判定されており、知能指数75以下の場合に知的障がいと判定されています。
知的障がいは個人差が大きいため、採用を進めていく段階から、本人だけでなく保護者や支援機関の担当者などから生活状況のヒアリングを行い、採用後の業務を決めていく必要があります。
精神障がい
精神障がいは、精神疾患のために精神機能に障がいが生じる障がいのことを指します。
さまざまな精神機能に障がいが生じるため、精神が正常に働かないことや行動に異常が出現するなどの特徴があります。
このような特徴が確認できた場合に、精神障がいと認められます。
精神障がいは、大きく3つに分類されます。
・外因性精神疾患(外傷や疾患、薬物などの影響)
・心因性精神疾患(心理的ストレス)
・内因性精神疾患(原因がはっきりしない精神症状)
精神疾患と言っても、種類がさまざまあり、以下のような症状が挙げられます。
・統合失調症
・うつ病
・躁うつ病
・発達障がい
精神障がいの方は、緊張状態でいると心身ともに疲れやすいため、採用後仕事に慣れるまでは、休憩の回数を増やす、労働時間を短くするなどの配慮を行いましょう。
障がい者を受け入れるための準備について
障がい者を受け入れるためには、どのような準備をしておく必要があるのでしょうか。
準備をする前に、障がいのある人が職場で働く上で不安に感じるポイントをご紹介します。
・仕事に対する不安
・周りの視線や将来に対する不安
・金銭面や体調面での不安
障がいのある人が職場で働く上で不安に感じることを解消できるような準備が必要です。
仕事に対する不安は、以下のような準備を行っておきましょう。
・作業内容を具体的に伝える
・不明点があった場合、誰に聞けばいいかを明確にしておく
・受け入れ部署で受け入れのための研修を行う
一方で、将来に対する不安や金銭面などの不安に対しては、企業だけでは対応できない部分が大きくなってしまいます。
そのため、支援機関やご家族と連携しながら、対処していくことが重要です。
障がい者本人だけでなく、人事担当や受け入れ部署の従業員の負担とならないようサポートが必要となります。
まとめ
今回の記事では、障がい者雇用と一般雇用との違い、障がい者雇用に関する法律、障がいの種類などについて解説してきました。
障がい者雇用と一言でいっても、障がいの種類などによって個人差があります。
そのため、どのような障がいを持った方を採用するのか、どのような業務を依頼するのか、採用後のフォローをどうするのか、などを事前に決めておくことが非常に重要です。
自社だけで障がい者雇用を進めていくのが難しい場合は、お気軽にお問い合わせください。